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揺れる天然ガス大国 "シェールガス革命"の衝撃
揺れる天然ガス大国 "シェールガス革命"の衝撃
2月26日7時56分配信 産経新聞
【クレムリン経済学】
天然ガス大国のロシアが昨年、前年比マイナス12%の大減産に見舞われ、生産量で世界一の座を7年ぶりに米国に明け渡した。米国で「シェールガス」と呼ばれる新形態の天然ガス産出が本格化したうえ、ロシア産天然ガスの大口輸出先である欧州諸国がロシア以外からの液化天然ガス(LNG)輸入を増やしたためだ。天然ガス市場の地殻変動を受けて"エネルギー帝国"の足元は揺らいでいる。
◆米企業が技術確立
シェールガスは、既存のガス田で天然ガスを産出した後、硬い岩層に閉じこめられて残っているガスをいう。長らく放置されていたが、この2~3年間で米国企業が採掘技術を確立し、天然ガス業界で「シェールガス革命」とも呼ばれている。
この「革命」により、米国で採掘を見込める天然ガスの埋蔵量は3年間で2割も積み上がった。米国でのシェールガス年産量は2007年の340億立方メートルから昨年は900億立方メートルへと飛躍的に増加。15年にはシェールガス生産が1800億立方メートルに達し、米国のLNG輸入は10億立方メートルまで減るとも予測されている。
米エネルギー省によれば、昨年の米国の天然ガス生産は6240億立方メートルに達したとみられ、年産5820億立方メートルにとどまったロシアを引き離した。ロシアの大減産は欧州向けの輸出が振るわなかったためで、ここにも「シェールガス革命」の余波は及んだ。
ロシアから輸出される天然ガスの8割以上は欧州連合(EU)に向けられており、長期契約に基づいてパイプラインで供給されている。しかし、欧州市場のガス需要は昨年、世界不況のあおりで前年比8%も落ち込んだうえ、米国市場であぶれたカタールなど中東やアフリカ産のLNGが流入し、欧州市場では"価格破壊"が起きた。
◆欧州市場で価格破壊
露誌「新時代」によると、昨年のEUでは、LNGのスポット市場価格がロシア産天然ガスより45%も安くなる状況が生じ、欧州諸国がLNG調達に走る結果を生んだという。
ロシアでは今後の大型ガス田開発にも黄信号がともる。露国営天然ガス独占企業のガスプロムはこのほど、北極圏にある世界最大級のシュトックマン・ガス田の開発計画を3年延期し、16~17年の操業開始を目指すと発表した。同ガス田はLNGによる米国向け供給を見込んでいたものの、その展望が完全に消え去ったことが理由だ。
シェールガスがどれだけ有望な資源なのかをめぐっては賛否両論がある。採掘コストが新規ガス田開発より安く済み、ポーランドやフランスなど欧州諸国にも存在が見込まれることは利点とされる。一方、在モスクワの専門家は、「シェールガス田は5年ほどでピークを迎える"短期決戦型"だ。近くに産出ガスを輸送するパイプラインなど既存施設がなければ採掘はできず、地質構造から見て世界中にあるわけでもない」と指摘する。
とはいえ、米エクソンモービルや仏トタルなどメジャー(国際石油資本)が競うようにシェールガス事業に参入し、欧州諸国もこの分野の調査に予算を割き始めている。欧州はロシアへの資源依存度を下げる意味でもLNG調達を重視しており、08年には天然ガス需要の12%にすぎなかったLNGの比率が増していくのは確実とみられている。
国際エネルギー機関(IEA)のビロリ主任エコノミストは今月、モスクワでのフォーラムで、「15年までにロシア産天然ガスには2千億立方メートルの『余剰』が生じるだろう」と欧州市場の"飽和"を予測した。
一方、ロシアでは昨年、本格稼働を始めた極東の石油・天然ガス開発事業「サハリン2」が、LNGで欧州や近隣諸国以外に天然ガスを供給する唯一のプロジェクトだ。天然ガス輸出の多角化戦略は緒についたばかりであり、ロシアが今後数年間で「世界一」に返り咲くのは難しいとみられている。
ロシアでは石油・天然ガス産業からの税収が国家歳入の5割にのぼる。政権が天然ガス市場の異変に危機感を抱いているのは疑いない。(遠藤良介)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100226-00000049-san-bus_all

