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ソ連の遺産 農地提供 隣国に大きな不安

ソ連の遺産 農地提供 隣国に大きな不安
8月5日7時57分配信 産経新聞

 【巨竜むさぼる 中国式「資源」獲得術】第5部(2)

 「国土は売り物ではない」「国民の意見に耳を傾けよ」。カザフスタンのナザルバエフ大統領(70)を真っ向から批判するプラカードが踊った。

 今年の1月30日、レーニン像に粉雪が積もる同国南部の旧都、アルマトイの公園。真冬の反政府デモには約1千人が集結した。

 発端は昨年12月の大統領の発言だった。「中国から菜種、豆類、他の飼料の栽培のために100万ヘクタールを提供してほしい、との提案があった」と明かしたのだ。

 アルマトイの反体制週刊紙「言論の自由」も、事業に参加する中国企業名や、年間収益の見積額が記された文書の存在をスクープ。水面下で両国の協議が進んでいた可能性を示した。

 農地提供の問題が反政府デモにまで発展した背景には、大統領への不満と隣国・中国への不安がある。

 ナザルバエフ氏は旧ソ連からの独立以来約20年、大統領の座にある。6月には大統領より格が上の「国家指導者」という称号を得て不逮捕特権も手にした。

 野党幹部のスボイク氏は、「権力の周辺は中国からのわいろに首まで漬かっている。中国は日本などと違い、わいろがはびこる国との付き合い方をよく知っている」と皮肉った。

 豊富な地下資源が眠るカザフスタンは農業国でもある。昨年の穀物収穫量は2千万トンで余剰分を輸出している。世界9位の広大な国土に暮らすのは約1560万人で人口密度は1平方キロ当たりわずか6人。一方の中国は世界最多の人口約13億を抱え、2004年に小麦の輸入国に転じている。

 1500キロの長い国境を越えて中国人が押し寄せてきたら-。そんな不安に駆られるカザフスタン国民は決して少なくない。

 さらに、アルマトイでシンクタンクを主宰するサトパエフ氏が警鐘を鳴らすのは不透明な国内情勢だ。

 「中国は1千年のスパンで戦略を立てている。トップが一人死去したぐらいで揺るがないが、カザフスタンでは大統領が死去したら、その翌日から何が起きるか分からない」

 中央アジアに詳しいある中国人記者は、「わが国には食料は十分あり、カザフスタンで農地を借りる必要はない」と強調する。一方で、人口が15億人とピークに達する30年ごろには数億トンの穀物が不足するとの中国国内の報道もある。

 将来の予測は別として、中国人がすでに進出して農業を営んでいる国がすぐ近くにあった。ロシアだ。

 アムール川を境に中国黒竜江省と接するユダヤ自治州によると、農地全体の15%に当たる1万6千ヘクタールを中国企業が耕す。全生産量のうち米は100%、豆類は4割をこうした中国企業が生産している。

 東隣のハバロフスク地方でも、「各集落が中国側と農地を貸し出す契約を結んでいる。ロシア人の土地を中国人が借りて耕作する例もしばしばだ」(同地方のフロロフ土地関係管理局長)という。

 米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は6月、ロシア国内で中国人が耕す農地は85万エーカー(約34万4千ヘクタール)に及ぶと報じた。事実とすれば、欧州の小国ルクセンブルクの1・3倍の広さに相当する。

 ロシアの極東部では、この20年間で人口が25%も減った。地方政府にとっては、人口減で廃虚が増えるぐらいなら中国人に来てもらった方がよい、という窮余の一策かもしれない。

 ただ、中国ではこんな報道すらある。「2025年には、中国人がこの地域の主要住民になるだろう」

 カザフスタンの人々の懸念も故(ゆえ)無しとしない。(アルマトイ 佐藤貴生、北京 矢板明夫)


http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100805-00000097-san-int

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