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恐怖政治と戦うロシア女性

恐怖政治と戦うロシア女性
4月26日10時41分配信 産経新聞

 2人のロシア人女性が先日来日し、東京都千代田区の明治大学で日本人の学生たちに講演をした。露政権批判の急先鋒(せんぽう)、ノーバヤ・ガゼータ紙記者のエレナ・ミラシナさん(32)と、国際的な人権擁護団体ヒューマン・ライツ・ウオッチ(HRW)モスクワ事務所副所長のタチヤナ・ロクシナさん(36)である。

 ロシア南部のチェチェン共和国で悪化の一途をたどる人権蹂躙(じゅうりん)の実態と、ロシアでの言論弾圧がテーマだった。

 「昨年だけで、武力によるチェチェン封じ込め政策を批判するジャーナリストや人権活動家たち6人が殺された。しかも、犯人は一人として処罰を受けていない。ロシアの言論の自由はどんどん悪化している」

 チェチェンなど北カフカス地方を何度も取材で訪れ、脅迫や危険な目に遭いながらも報道を続け、HRWの2009年人権賞を受賞したエレナさんの言葉には説得力があった。

 殺害されているのは、人権活動家のナタリア・エステミロワさんや、エレナさんの先輩にあたる著名ジャーナリストのアンナ・ポリトコフスカヤさんなど、情熱を持って活動している女性が多い。その現実に、背筋が寒くなった。

 エレナさんによると、ソ連崩壊後、ロシアに初めて自由なジャーナリズムが誕生したが、それもつかの間。プーチン氏の時代になると、テレビといった影響力のある主要メディアの自由が奪われた。プーチン氏は、チェチェン紛争が終結したと主要メディアに報道させているが、実際には、戦争は続いている。チェチェン内に限られていた紛争は、今や北カフカス地方全体に広がっている。

 しかも、チェチェンでは、治安を維持する側の内務省軍部隊が首都グロズヌイ近郊のノーブイ・アルディ村で2000年2月、金銭や貴金属の略奪の目的で、2~72歳の村人56人を殺害するといった大量強盗殺人事件が何件も起きているという。

 「法ではなく、略奪や誘拐、殺人、レイプなどの犯罪が支配する中で、村人たちは、武器を取って戦うしかない。密室の中で行われている武力に依存した封じ込め政策が続く限り、テロリストたちは永遠に消えてなくならないだろう」

 タチヤナさんは、チェチェンの親露派、カディロフ政権の独裁体制について説明した。取材中、チェチェン人から「今夜、お前をレイプして殺してやる」と脅されたこともある。脅迫は日常茶飯事で、人々は自分のことを語らなくなった。話せば、息子が逮捕されて拷問を受けたり、家が焼き打ちにあったりと、報復の恐れがあるからだ。

 「クレムリンにさえ忠誠を誓えば何でも許される。チェチェンは、恐怖が支配する犯罪者の孤島となった」と断言した。

 最後に、「女性なのになぜそこまでやるのか」「怖くはないのか」との会場からの質問に、エレナさんはこう答えた。

 「怖いけれど、やめたら、死んでいった同僚に申し訳ない。愛する祖国のためにも真実を書き続けるしかない。うまく説明できないのですが、やめるわけにはいかないのです」

 紛争は、まだ続くのだろう。だが、恐怖政治と戦う女性たちにも弾丸を撃ち込む冷酷な犯罪者を処罰できない体制に、未来はない。(論説委員・内藤泰朗)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100426-00000520-san-int

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